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第3回水戸まちなかデザインシンポジウムを開催しました

更新日:3月25日



 2023年3月12日に第3回水戸まちなかデザインシンポジウムを開催しました。

 今回は、令和3年度に策定した未来ビジョンを基に実施した社会実験「水戸まちなかリビング作戦2022」の内容と検証結果の報告。小野寺康氏(小野寺康都市設計事務所)による講演。報告と講演を踏まえ、まちなかに関わる人たちによるトークセッションを行いました。


 今回のシンポジウム全体の様子は、水戸まちなかチャンネル(YouTubeチャンネル)をご覧ください。


 

「水戸まちなかリビング作戦2022」の実施報告


《実施概要》 

 


 はじめに2022年10月に実施した社会実験「水戸まちなかリビング作戦2022」の内容をご紹介しました。本社会実験では「居心地が良く歩きたくなるまちなか」を目指して、


快適な居場所作り・まちを使いたくなる仕掛けづくり・それらの効果検証


を行いました。


 


《報告1 SNSによる店舗情報の効果》


 社会実験期間中、多くの人に新しい水戸のまちなかの魅力を知ってもらうためのプロモーション活動として、運営スタッフ「水戸まちなかリビング作戦実行委員会」のメンバー15名が主に実験エリア内の店舗に取材を行い、49店舗の紹介記事をSNS(Instagram・Facebook)に投稿しました。



  • 10/8から10/30の投稿に対する閲覧は4,150アカウントに達し、大半の3,880アカウントがフォロワー以外でした。

  • インタラクションは合計で1,607件あり、そのうち本アカウントのプロフィールへのアクセスは904件という結果になりました。

※インタラクション:ユーザーが何かしらのアクションを行うこと


 この取り組みにより、地元の店舗の方と実行委員会のメンバーとのつながりを作り、SNSユーザーには水戸のまちなかの店舗情報を発信し、閲覧されることで本協議会や取り組みへの認知度向上に貢献しました。


 

《報告2 会場利用者・まちなかで暮らす人の評価》


 会場利用へのアンケートやヒアリング、水戸のまちなかで暮らす方へのアンケートによる社会実験全般に関する評価を調査しました。



●実験会場別レポート(n=35)

  • 利用目的について、大半が「休憩」「飲食」「散歩」のいずれかでした。

  • 会場の満足度について、不満の声がなく8割以上が満足していました。

  • 実験以降の継続的な会場利用について、9割以上が継続的に利用したいと回答しました。

  • 自由意見について、「Wi-Fiが使いやすかった」「常設のカフェや飲食店があれば、もっと盛り上がる」「まちなかに犬が遊べる場所が少ないので、ドッグランはすごくいい」等がありました。一方で、「屋外空間だから暖房がないと寒い時に使えない」「テーブル下の埃やゴミが気になった」という意見がありました。


●会場利用者ヒアリング(n=25)

  • 社会実験による生活の変化について、「買い物後、外でコーヒーを飲むようになった」「子どもが昼寝したタイミングで休めた」等、テーブルやベンチを設置したことで休めた、というお声をいただきました。

  • 実験への感想について、グリスロを継続してほしいという肯定的な意見が非常に多く、また南町自由広場に設置した植栽に対して「子どもが歩道に飛び出さないため、安心して利用できる」といった声がありました。


●住民等意向調査アンケート(n=224)

  • 社会実験による私生活の変化について、約1割が私生活に変化があったと回答しました。

  • 快適な居場所作り・自家用車に代わる新たな移動手段に関する取り組みの継続についての質問では、「継続希望」が約7割、以下「どちらとも言えない」が約2割、「希望しない」が約1割という結果でした。

  • 昨年度に策定した「未来ビジョン」への共感度については、7割以上の方が「共感する」と回答し、約2割が「分からない」、との回答を頂きました


 会場利用者、水戸のまちなかで暮らす方々に、今年度の社会実験や活動に関するアンケート、ヒアリングを行った結果、利用者からは不満の声はなく、高い割合で満足し、継続を希望していました。また、社会実験によって自身の生活に変化があったことが確認されました。まちなかに住む方からは、昨年度、策定した「未来ビジョン」に対する否定的な声は少なく、多くの方に共感をいただき、快適な居場所作り・自家用車に代わる新たな移動手段に関する取り組みを求めていました。


 


《報告3 AI画像解析による交通データや会場利用の効果》


 AI画像解析を活用し、グリスロが走行した南町2丁目裏通りの車両の交通量や速度の交通データと会場利用者の滞留状況や人流に関する分析を行いました。


●交通データ

○車両交通量

  • 通行台数は、実験期間後に関わらず平日が休日よりも多く、期間中と期間前後で比較しても大きな変化は確認されませんでした。

○車両速度

  • 実験期間中と期間前後で比較しても、特に変化は確認されませんでした。このことからグリスロの走行が南町2丁目の裏通りの交通状況に大きな影響を与えないことが分かりました。

  • 期間中、裏通りに車両速度の減速をお願いする看板を設置していましたが、減速効果は認められませんでした。

  • 一方で、期間問わず車両速度の最大値が70㎞/h付近であることが確認されたため、減速のための取り組みが必要であると考えられます。


●会場利用への効果

〇滞留調査

  • 期間中、テーブルやベンチ等を設置したことで、より多くの人が滞留していたことを確認することができ、特に南町自由広場で顕著に表れていました。

  • 期間後、テーブルやベンチ等を撤去すると滞留する人は確認されず、テーブル等により滞在性を向上させていたことが分かりました。


〇人流調査

  • 西洋倶楽部ビルの屋外部分では、期間中、通行空間の半分にテーブルセット等を設置していましたが、期間前、期間後と比較しても人流は過密にはならず、通行を妨げることはありませんでした。

  • 南町自由広場では、期間中は人流が複雑な動きをしているのに対し、期間後は通り抜けと見られる直線的な動きが多くなり、居場所作りにより滞在性の向上と合わせて、多様な空間活用に貢献したと推察されます。


 グリスロが走行していた南町2丁目の裏通りや実験会場で、定点観測した映像を分析した結果、裏通りの交通は、実験期間中と期間前後で交通量、車両速度ともに大きな変化は確認されず、グリスロによる裏通りの交通流への影響はありませんでした。実験会場では、テーブルやベンチ等を設置し、居場所を作ったことで、人々がそれらを利用し、実験前後よりも空間に長く滞留しており、これらの取り組みの効果が明らかになりました。


 


《報告4 水戸のまちなかにおけるグリスロの効果》


 水戸のまちなかにおけるグリスロの実証実験と効果検証については、調査に主体的に参画していただいた上野颯一郎氏(茨城大学工学部都市システム工学科4年次)に報告していいただきました。



●水戸のまちなかにおけるグリスロ効果の検証結果

○乗車目的

  • 「買い物」、「通院・通学」等の目的意識を持った「試し乗り以外」での乗車が約3割確認されました。

  • 年齢層別では、65歳以上の女性が他の属性と比較して、何らかの目的を持って乗車する割合が高いことから、女性高齢者は、比較的グリスロを上手く自身の生活に活用している傾向が示唆されました。

○支払い意思額

  • 一回の乗車につき100円を支払える人の割合は、約7割が占めていました。料金を徴収することへの抵抗感は少ないものの、半数が100円/回のため、高い支払い額とは言えない結果になりました。

  • 年齢別層では、65歳以上の女性は「1乗車当たり200円以上でも利用したい」との回答が約4割を占め、女性高齢者から高い評価を得ている可能性が示唆されました。

○満足度

  • 「満足」、「やや満足」合わせて9割以上と、満足度が非常に高いことが確認されました。

〇利用者の声

  • 利用者の意見や生活の変化から、グリスロでの移動体験がもたらす効果として、「まちなかでの移動そのものを楽しむ」「新しい人との交流を紡ぐきっかけとなる」。移動手段としてのグリスロの役割として「高齢者の移動の負担が減り、外出しやすくなる」といった効果が示唆されました。


 水戸のまちなかでのグリスロは、利用者に非常に高い満足度をいただきました。その移動がもたらす効果としては「まちなかでの移動自体を楽しむ効果」、「まちなかでの新たな消費意識を醸成する効果」、「新しい人との交流を紡ぐきっかけとなる効果」の3つの波及効果が得られました。また、近隣住民のライフスタイル変化の可能性については、「高齢者の移動の負担が減り、外出しやすくなる」、「まちなかでの消費意識が醸成される」ことが示唆されました。


 


講演「会話から生まれる新たなまちのデザイン」


■ゲスト 小野寺康(小野寺康都市設計事務所)


 講演では「会話から生まれる新たなまちのデザイン」テーマに、小野寺氏自身が携わられたプロジェクトを紹介し、会話からどのようにしてアイデアが生まれ、まちがデザインされてきたのかお話しいただきました。


 

《事例1 宮城県女川町》


 宮城県女川町は、専門家や町長、部長等によるデザイン会議で町の構想を質・スピードを落とさずに議論して決めました。


●レンガみち

 

「レンガみち」について

 女川駅から海岸に向けまっすぐ伸びる歩行者専用道路。途中、レンガ道沿いにテナント型商業施設「シーパルピア女川」、地域交流センター等の公共施設が並ぶ。また、レンガみちの周りには、町営駐車場がサテライト型に配置されいる。これにより、周囲の自立再建の商店街は各々で駐車場を作る必要がなく、敷地一杯に店舗に使うことができ、「レンガみち」を主軸に周りの自立再建の商店街まで賑わいを派生させる構造になっている。

 

 歩行者専用道路「レンガみち」とその道を挟んで建つ商業施設「シーパルピア女川」は、それぞれ女川町と民間のまちづくり会社が整備していますが、「レンガみち」に面した建物もレンガを使い素材を揃えたり、商業施設側の中庭等が「レンガみち」に、にじみ出てくるようなデザインを施す等、官民境界を感じさせない空間を創り上げ、一体化するようなデザインを仕上げました。


 また、「レンガみち」は元旦の日の出方向に向くように作られており、このアイデアは地元の方々が考えました。

 

●女川町海岸広場

 

「女川町海岸広場」について

 「レンガみち」の先にある海岸一帯を観光交流エリアとして整備。震災遺構や遊具公園、スケートボードパーク等が設けられている。

 

 「女川町海岸広場」のデザインでは、地元の方々との頻繁にワークショップを行いました。児童公園は、親が子どもを目に届くところで遊ばせたいと考え、人通りの主軸であるレンガみちの続きに児童公園を作ってほしいという意見から位置を変更しました。震災遺構は、地元の一人の主婦のコンセプトをもとにデザイン化されました。スケートボードパークには、地元の方のアイデアによりアンカーが設置され、イベント時にテントを設営する際の重りを用意する必要がなくなる等、空間の活用方法には、地元の商工会や商店街等の、町をずっと作ってきた若手リーダーたちと模型を見ながら議論し、二転三転どころではなく四転五転と地元の方々とデザインを組み立ててきました。

 

《事例2 兵庫県神戸市三宮》


 神戸市は、このエリアを街路、広場、沿道建物が一体となったウォーカブルな空間とすることを目指し、鉄道会社の駅ビルと高架下のリニューアルに合わせて整備が行われました。


●サンキタ通り

 

「サンキタ通り」について、

 もともとは高架側の歩道が狭く、通過車両と路上駐車がひしめき、夜は客待ちタクシーが並ぶ状況だったが、タクシーの客待ちスペースを移動、高架側の歩道を拡幅、一般車を通行止め、歩車道境界の段差解消などによりウォーカブルな空間づくりに再編。

 

 道路の空間活用については、関係者と話し合い「歩行者利便増進道路制度(ほこみち制度)」を利用して、民間敷地と約1.5mの公共の街路スペースを組み合わることで、オープンカフェを実現させ、沿道店舗と街路の一体的なにぎわいを生み出しました。また、街路の占有は、地元の企業と市で組織される任意団体が主体となっており、利用上のルールを明示することで、荒れることなく活用されています。

 

 小野寺氏は、まちのデザインについて「今はデザインの検討途中から地元の方々と会話し、一緒になって作っていく。まちが出来上がる頃には地元の方が既に自分たちのものであると思っている結果に至るのが、これからの主流になると思う。」と話しました。


 


トークセッション


■進行 金利昭(水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会)


■ゲスト

小野寺康(小野寺康都市設計事務所)

小田木健治(水戸市市長公室長)

久保田光代(Vegan Cafe terra オーナー)

上野颯一郎(茨城大学工学部都市システム工学科4年次)

大森賢人(水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会事務局)


 トークセッションでは、実験関係者、市職員、地元店主、専門家らによる社会実験の報告と小野寺氏の講演を踏まえたディスカッションを行いました。


 前半は今年度の社会実験について振り返り、それぞれの視点からの感触として、周知が不十分だったことが共通の課題でした。以下、意見の一部をご紹介します。



 

 後半は、小野寺氏による講演を受け、紹介した事例や会話から生まれるまちのデザインについて話し合いました。以下、意見の一部をご紹介します。




 

金会長からの総括

 

 昨年度は一所懸命やって大きな成果を得られた一方で、疲れてしまった。今年は無理をせずにここまで継続することができ、大変良かったと思う。全体の報告も聞きながら水戸にも非常に良いところがあり、やれば色々できるんだなと。しかも、テーブルやベンチを置くだけで、滞留の効果がAI画像解析の結果により見た目で分かることに励まされ、やる気がでたと思う。こういうことをきちんと取り組み、検証しながら前に進んでいることも分かった。


 今回、官民連携での会話によるデザインが凄く大事であることを、小野寺氏の講演をお聞きして、水戸でも続けていけたらいいなと思った。難しい点としては、取り組みに関わる人が各々本業がある中で、どのように関われるか考え、工夫しなければいけないと思うが、水戸ならではのやり方があると思うので、探しながら進めていければいいなと思う。


 私は来年が正念場かなと思う。やはり続けることが大事である。小さく始めて、大きく育てるということで、楽しく会話し、寛容にやっていければなと思う。

 

 

 今回のシンポジウム全体の様子は、水戸まちなかチャンネル(YouTubeチャンネル)をご覧ください。


 

少しでもこの取り組みが気になったみなさん

ぜひ参加してみませんか♪


水戸まちなかデザイン会議は水戸のまちなかの再生に向けて

活動するオープンプラットフォームです。


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